英雄サムソンとユダヤ少年の成功物語

 
『世界を征する「トーラー」の奇跡』(1987)より
 
「サムソナイト」はアメリカ製スーツケースの一流ブランドとして、世界中のビジネスマンの間でよく知られている。
 
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このサムソナイトというのは、もともとトランクの商品名であった。ところが、このトランクが丈夫で壊れにくいということで世界中の評判をとったところから、社名にまで昇格したのである。

1900年代の初めごろ、コロラド州デンバーの町に、突然、トランク類の販売で全世界一の売り上げを誇るカバン店があらわれた。大手のトランク・メーカーたちは、そのカバン店の経営者シュウェイダー商会のシュウェイダー氏をニューヨークに招いて感謝の気持ちを表すことにした。当日、ニューヨークのペンシルバニア鉄道中央駅には、トランク・メーカーの各社代表が出迎えのために顔をそろえ、はなやいだ雰囲気となった。しかし、列車からおりたったシュウェイダー氏を見て、全員が驚いた。それはシュウェイダー商会代表取締役がわずか十六才の少年だったからである。

彼は、父親と一緒に東欧からアメリカに移住してきたユダヤ人だった。最初、父親はニューヨークで雑貨屋を開いたが失敗。次いでシカゴに移って別の商売を始めたが、これもうまくいかず、その後は夜逃げ同然に各地を転々とした。

コロラド州のデンバーで八百屋を始めたときは、この商売に失敗すればもう行くところがないという状態だった。だが、不運はここでも続いた。さっぱりうまくいかないのだ。悲嘆にくれる父親を見て、息子のシュウェイダーは、「僕に店をやらせてくれ」と申し出た。

当時のデンバーは、保養地として有名だった。シュウェイダー少年が店番をしていると、八百屋の店先を新しいトランクをさげた保養客がひっきりなしにとおっていく。

その保養客を、この人たちが自分の店で品物を買ってくれたらどんなにいいだろう、と考えながら眺めていたシュウェイダー少年は、ある事実に気づいた。

その事実とは、帰りの保養客のトランクの大半は、きたときには新しかったにもかかわらず、こわれかかっていて、ほとんどがベルトかなにかで締めて、なんとかトランクの格好をたもっているといったありさまだったことだ。
「トランクを売れば儲かるのではないか」
シュウェイダー少年が父親に店をやらせてくれといったのは、このヒラメキがあったからだった。

シュウェイダー少年の予測は当たった。トランクは飛ぶように売れた。最初は渋っていたニューヨークのトランク・メーカーたちは、支払いが確実なこともあって、競って新製品を送るようになった。

保養客も、デンバーの片田舎で、ニューヨークの最新のトランクが手に入るということで、ますます訪れるようになった。

だが、どんなに売れているといってもカバン店にかわりはなかった。この状態から抜け出すには、自分もメーカーの仲間入りをする以外にない。そこで、今までのトランクにはない、落としても、ぶつけてもこわれないようなトランクをつくることにした。

そしてそのトランクができたとき、シュウェイダーは、彼がまだ幼いころ、彼の小さな胸をいつも感動させてくれた聖書の英雄サムソンにちなんでこのトランクを「サムソナイト」と名づけた。シュウェイダーは、自分の事業のうえにも幼い日の夢の記念を刻んでおきたかったからである。

サムソンの物語は旧約聖書の「士師記」に出てくる。「太陽の子、輝ける者」の意味の名前を持つサムソンは怪力無双。ライオンを素手で八つ裂きにし、強敵ペリシテの勇士一〇〇〇人をライオンのあご骨で打ち殺したりする。美女デリラの色じかけにはまって敵に捕らえられるが、最後は宮殿の柱をたおし、屋根の下敷きになりながら、敵もろともに死んでいく。ロマンと勇壮のサスペンス・ドラマがサムソンの人生だ。サムソンもギデオンとほぼ同時代の英雄だった。

現在では富豪のユダヤ人も、ほとんどが最初はひどい貧乏からの出発だった。そしてなんとかしなければならないという危機感が、集中力を養い、そして成功するヒントやヒラメキを生みだしたのだ。そうした彼らのかたわらにはつねに聖書がおかれていたのである。
 
 
著者:手島佑郎(ユダヤ思想研究家、父親の手島郁郎は無教会主義の流れを汲むキリスト教系宗教団体、キリストの幕屋の創始者)
 
 
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